☆産経新聞群馬版毎週金曜日掲載で『群馬女性5人のリレーエッセー』が2005年1月からスタートしています。
5週に1回づつ寄稿している浦部農園マダム・オリザの文章を産経新聞の承諾を得て転載します。
No.8 2005.11.2 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
湯島天神でもとめた古代米の量はわずかでしたが、使う量も白米の5%程度でしたから1週間ほどは毎日古代米のご飯を食べることができました。そのわずか1週間の間に便秘が解消し、朝の目覚めがすっきりするようになりました。いつもどんよりと曇っていた空がすーっと明るくなっていくような不思議な体の変化でした。たった1週間ですっかり古代米ファンになった私は手持ちが少なくなっても不安にも思わず、電話1本でその後も買うことができると思いこんでいました。ところが注文の電話をしたら「もうアレでおしまいなんだよ、百姓がさぁ100万もらったって作りたくない米だっていうんで種籾突っ返されて、手元にはその種籾しかない」っていうではないですか。でも幸いに我が家は農家で、細々とではあれ田んぼも畑もつくっていましたから、種籾さえあればこの米が作れる、と瞬時に思いました。しかも自分の田んぼなら有機栽培の古代米が食べられるわけです。一方で作り手を捜していたテキ屋にとっても私たちは都合のいい相手だったに違いありません。種籾は売れないが、自分たちのグループに参加してこの米を作って供給するということなら種籾を渡そう、作った米はいくらでも売れるから1反あたり軽く100万を超す収入になる、だからできる限り作付けをしてくれというのです。
田んぼは水管理がありますから欲しい分だけ作るというわけにはいきません。自分の欲しい分以上作っても売れるなら安心して栽培できます。そのときはまだ稲の形も特徴も知らず、ただ色の付いた不思議な米くらいの認識でしたし、テキ屋のお兄さんも百姓ではありませんから栽培については何の情報もありません。100万もらったって作りたくないと農家に言わしめたほどの米とはどんな米だったかということはこのあと身をもって思い知ることになるのですが、話の始めはいいことづくめで魅力的だったのです。