2010.8.7上毛新聞掲載より
有機栽培・・日本農業再生への道 かつて有機栽培は技術よりも志に依拠する重労働で、ただ消費者によって支えられてきた農法でした。 しかし今日、有機農業基本法など法的整備も進み、農業の重要な一角を担うとともに草を出さない技術も確立してきています。農園でも100枚を超える田んぼのうち今年草取りに入った田んぼは2枚だけです。 一方で農薬に依拠してきた農法では、農薬に耐性を獲得した草や害虫に対応できない現象も起こっています。 農業とは本来自然環境を巧みに利用することで成り立つ産業です。 農薬や化学肥料を多用する近代農業の普及によってその原点がみうしなわれ、同時に伝承されてきた技術も失われてきましたが、有機農業者たちは試行錯誤を重ねながら自然と共生する技術の確立に努力してきました。農園でも20年の試行錯誤を経て、米・麦・大豆を2年間の間に輪作することで抑草に成功しています。大豆作に向かない湿田では代掻き時に大豆を散布することで同じ効果を上げることができます。この技術によって田の草取りから解放されると同時に、大豆の自給率向上に貢献することができます。 福島県の有機農業者によって提唱された米ぬかペレットによる除草は湿田で効果を上げており、農園が提唱する2年3作方式による大豆利用の除草技術は乾田において効果を発揮します。 いまや有機稲作の技術は確立しており、農薬化学肥料を多用する必要はありません。しかしこうした技術的水準や到達点があまり知られていないのは残念なことです。 農薬を多用する農法は、消費者、農業者双方に健康被害をもたらすリスクが高く、病害虫に耐性をもたらし、次々と新しい農薬開発を余儀なくされるような悪循環に陥っています。農薬は毒性があってはじめてその役割を発揮する故に厳しい毒性試験が課せられるわけですが、安全と言われた農薬が使用禁止になる例は後を絶ちません。かつて大量に使用された有機リン系の農薬は、神経への悪影響が懸念されることから、ここ数年で急速にネオニコチノイド系農薬に切り替えが進んでいますが、まだ使用され始めて間もないにもかかわらずミツバチの大量死を引き起こすなど安全性に不安があります。 日本の農薬使用量は世界一です。いっぽうで化学物質過敏症やアトピー、がんなど難治性の疾患も急増しています。昔使われることのなかった農薬と、昔はなかった疾病との関係を思うとき、農薬を使わなくてもできるものには農薬を使わない、という農業者が増えることを望みます。 日本農業が有機栽培へと大きく舵を切ることが日本農業の再生を可能にする道と思います。 農園では有機栽培の技術指導も行っています。 これまで有機栽培なんて無理と思っていた方も思い切って始めてみませんか。 |
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