☆産経新聞群馬版毎週金曜日掲載で『群馬女性5人のリレーエッセー』が2005年1月からスタートしています。
5週に1回づつ寄稿している浦部農園マダム・オリザの文章を産経新聞の承諾を得て転載します。
No.14 2006.6.23 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
草取りで体にスイッチ
ひと夏の草取りは、私の体のなかの、忘れられていたなにかのスイッチを入れたようです。
その日から緩やかに体は本来の力を取り戻し始めました。朝自然に目が覚めること、手足に暖かさが戻ったこと、季節の変わり目に体調を崩さなくなったこと、朝、排便がきちんとあること、これら日常の小さな変化は自分でも気がつかないほど緩やかでしたが、ある年の春、花粉症が全く起こらなくなっていることに気づいてとてもびっくりしたのです。今年は花粉が少ないのかしらと夫に聞くと、世間では大騒ぎだよ、みんなマスクをして歩いてるというではありませんか。そこで初めて自分の体が後戻りすることなく確実によくなっていることを自覚したのです。
食べ物は確かに体の不調に歯止めをかけ、日常生活に支障ないところまで私を引き戻してはくれましたが、本当の意味で健康、といえる状態に戻るには、自分の体をしっかりと使うということが不可欠だったのです。このことは私にたくさんの教訓をくれました。
体は食べたものだけでできている。だから食の安全性やバランスに注意をはらうのはとても大切だけれど、食べたあとそれを消化し、代謝し、血肉となし、不要なものは排泄するという一連の大仕事への入り口にすぎないともいえるのです。
私たち人間に限らずこの地上で生あるものはすべからく進化の過程で獲得してきた位置があります。歯の形は端的に私たちにそれを教えます。人の歯は臼歯・門歯・犬歯の割合が5:2:1。歯の役割から類推して、穀物を5:野菜根菜を2:肉魚は1の割合で食すことが私たち人にとってもっともバランスのいい食事といえるのです。
では人にとってもっともむりのない体の使い方とはどういうものなのでしょうか、それは食のバランスを歯の形が教えてくれるように、自分の体がきっと教えてくれるはづ。そう気づいたことで私は自分の体の声を聞く、ということを意識し始めました。意識すれば変化が生まれます。良くも悪くも変わりうる体は、意識することでコントロールが可能ではないかと思ったのです。