☆産経新聞群馬版毎週金曜日掲載で『群馬女性5人のリレーエッセー』が2005年1月からスタートしています。
5週に1回づつ寄稿している浦部農園マダム・オリザの文章を産経新聞の承諾を得て転載します。
No.17 2007.2.16 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
有機農業は、環境に負荷を与えない農法であり、食の安全安心を求める消費者のためにも日本でもっと盛んになって欲しいと願うのですが、現実は厳しいものがあります。国際的なオーガニックの潮流は大きくなってきており、日本でも輸入オーガニックが大きな市場をしめつつあるのと裏腹に国内では有機農法に取り組む農業者が育ちません。7年前に有機JAS法が施行されたときには、これで日本にも有機農業が盛んになるのでは、と期待したのですが、ふたを開けてみれば事務作業や表示方法などに煩雑で詳細な記載を義務づけられる一方、その負担は生産者側に重く、そのためこれまで有機農業でがんばってきた小さな農家が有機の市場から撤退していく構図が生まれています。施行5年目の見直しではこの傾向がいっそう顕著になり、いまや生産現場からはJAS法は有機取締法とまで酷評されています。ヨーロッパでもアメリカでも、韓国、ベトナムなどアジアの国々でも、国策として有機農業を奨励し、保護しているのに、日本では保護どころがホビー的農業と位置づけられ、農業の施策の枠組みから排除されてきました。JAS法の施行で有機農業を環境保全型農業の一形態としてようやく認知したにすぎません。こうした国の姿勢を変える大きな力になると期待されるのが、先の臨時国会で可決された有機農業推進法です。まだ骨組みができあがっているだけですから、実効性あるものとすべく血肉を与える作業がこれから始まります。具体的な施策の策定にあたっては生産者からの意見を聞くよう明文化されているのですから、是非とも思いを伝えていかなければなりません。世界の気象がおかしくなるほど環境が破壊され、人々の体がおかしくなるほど食の不安が大きい、もう逡巡する時間はあまり残されていないような気がします。自然条件に恵まれたこの国で、食の安全安心を輸入ではなく自国でまかなうという決意、そしてそのためにはどうしたらいのか、なにが必要かをようやく論ずる土俵が用意されたと思うと感慨深い思いです。
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