No.25



☆産経新聞群馬版毎週金曜日掲載で『群馬女性5人のリレーエッセー』が2005年1月からスタートしています。
5週に1回づつ寄稿している浦部農園マダム・オリザの文章を産経新聞の承諾を得て転載します。

No.19 2007.4.20 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
4月になるとあちこちで優しい色の花が咲きほころんで気持ちも華やかに浮き立ちます。15ヘクタールの田植えの大変さも1年たつとなつかしく、作業の開始を心待ちにしている自分に気がつきます。庭の桃の花が咲きほころび、我が農園でも播種作業が始まりました。桃の実がたわわに実る頃には田植え作業が最盛期を迎えます。田植えは米作りのもっとも魅力的なイベントですから毎年消費者があちこちからお手伝いに来てくださいます。その昔、私も米作りは田植えから稲刈りまでとイメージしていました。でも実際には田植えの前の作業こそが一番の正念場、田植えはその到達点だということが今では骨身にしみてます。籾を選別し、播種・育苗して田植えに至るのですが、冬場の施肥管理は勿論、田植えまでの間に、崩れかけた畦畔をなおしたり、代掻きをしたり、草刈りをしたりと地味な作業が目白押しです。播種後の育苗管理にも気を遣う日々が続きます。米作りの全行程の中でももっとも神経をつかうのが田植え前の一連の作業です。ここでしっかりとした苗を作れば、田植えも楽ですし、そのあとの水管理もしやすく、草取りのリスクも低くなります。そうはいっても思わぬ天候の変化や段取りの悪さが苗の生育を送らせたり、不揃いにすることもあります。でも自然相手の良いところは、手のかけ方を多少間違えたところで取り返しのつかないような結果になったりしないこと。いのちはちゃんと育つようになっているのです。冷夏の年も草に負けた年も必ず秋になれば稔りの時が来る、こんなところはまるで子育てみたいです。赤ちゃんの時にしっかりと手をかけて、一杯抱きしめて育てた子は、ゆったりのびのび育ちます。でも子育て時代の私は大病をし仕事も抱えていっぱいいっぱいで、ていねいに子供と向き合うなんてできませんでしたが、ありがたいことにそれでも子供は自分でちゃんと育っちゃう。苗も子供も同じで、いのちは育つようにできている、そのいのち強さを信じて寄り添うことが一番大事なのかもしれません。

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