☆産経新聞群馬版毎週金曜日掲載で『群馬女性5人のリレーエッセー』が2005年1月からスタートしています。
5週に1回づつ寄稿している浦部農園マダム・オリザの文章を産経新聞の承諾を得て転載します。
No.20 2007.5.20 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
有機農法に取り組んで18年、年々栽培面積が拡大し今年は15ヘクタールを作付けする事になりました。毎年品切れになるため面積を増やしてきた結果です。手探りで始めた最初の頃は、とにもかくにも草取りに明け暮れましたが、今では草に泣かされることはほとんどありません。米については有機の技術が確立したと言っていいと思います。
消費者の需要のおおきい有機米ですが、農薬や化学肥料にさらされることのない農作業は同時に作り手の健康を守る農法でもあります。 草を出さない有機の米作りのポイントは苗作り。田植え直後から深水管理をするために3.5葉15pの苗を作ります。通常のマット育苗ではここまでの生育がむづかしいためポット式の苗箱を使います。ポット苗箱を使う方法はみのる産業が寒冷地仕様として開発した技術ですが、寒さに負けない健苗づくりが有機栽培にはぴったりなのです。苗作りの次のポイントは田植えの手順。田植え前に2回代掻き、代掻き3日以内に田植え、田植え当日に込めぬかペレット散布、田植え翌日までに屑大豆散布をおこないます。これで初期抑草にかなりの効果があります。管理する面積が少なければ草取りに入る苦労はほとんどないでしょう。浦部農園の圃場は70枚以上ありますので、管理が行き届かなくて草を出してしまう圃場もありますが、そんなときには腹をくくって草取りに入ります。
炎天下ひたすら土にかがみ込む労働はキツイですが、しっかりと汗をかくことは体の老廃物を洗い流してくれますから草取りもまた良きかなと思います。デトックス効果を期待して化学物質過敏症のお客様が草取りをさせてくださいといって田んぼに入られることもしばしばです。忙しい中、食事はシンプルに玄米と古代米中心。マクロビオティックの食事を実践しています。肉や魚は殆ど口にしませんがそれがかえって働きやすい体を作ってくれるように思います。せっかく有機農業を実践しているのですから生活そのものにも同じ気持ちで丁寧に向き合いたいと思って、たどり着いたのがマクロビオティックでした。
No.21 2007.6.20 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
今、マクロビオティックがブームです。本格的なマクロビオティック料理やお砂糖や動物性を使わないスイーツなどのお店はどこも若い女の子でいっぱいです。私は東京東北沢にあるリマクッキングスクールで初級から師範まで勉強させていただきましたが、今は希望者が殺到していて予約を取るのも大変だとか。昔は暗い顔した病人や年配の人ばかりだったのに、今は若い人がいっぱいで教室がにぎやかで良いわと古くからの先生はおっしゃいます。マクロ=大きい ビオ=いのち ティック=〜術 は桜沢如一という明治生まれの先達が提唱した玄米菜食健康法ですが、当時日本では誰も耳を傾けなかったといいます。そのため昭和初期にはフランスへ出国、戦前戦後にかけて世界中で東洋思想に基づく食養生の普及に努めた際、この言葉が使われたのです。そのため日本より海外のベジタリアンに知られており、マドンナやマイケル・ジャクソンなどが実践者として有名です。そのマクロビオティックが今、日本で空前のブームを引き起こしていますが、その背景にあるのは若い人たちの危機感です。生まれたときからアトピーやアレルギーに向き合わざるを得なかった世代は、自分たちの体をおかしくしたのは環境と食事だと感じているのです。そこには一過性の流行にありがちな浮ついた気分はありません。むしろ生き方や考え方までも変えていく力があります。若い人たち、とりわけこれから子供を生んでいこうという女性たちが、食事に注意を向けはじめたのは本当にうれしいことです。玄米と味噌汁という組み合わせは食養の要です。浦部農園が必死に守りたいと思ってきた農の原点が結実したのがマクロビオティックの食事なのです。一物全体、身土不二、陰陽調和という言葉はマクロビオティックの本質をよく表していて好きな言葉ですが、一番好きなのは「お台所は家庭の薬局、主婦は家庭の薬剤長」という言葉。家族の健康や笑顔がお料理する人のさじ加減一つで守れると思ったら、お台所が大好きになりますよ。
No.22 2007.7.27 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
体調に不安があるときは、分析や権威に頼って食材を選択するかと思えば、根拠もないのにマスコミが取り上げただけで飛びついてみたり、人が良かったといえば体質の違いも考えず取り入れてみたりしがちです。大ブームを引き起こしながら知らないうちに消えていった健康食品の類は数知れず、一方で医者も薬も効果が出せない症状に苦しむ人たちも増え続けています。いったい何をどのように食べたらいいのか、もし羅針盤を持つことができれば無駄にお金を使ったり、誤った食事で体を痛めることもないのですが。食事と健康は密接なつながりがあるということは昔から実感せられてきたことで、世界のおもだった宗教には必ずと言っていいほど食に係わる教えがあります。古代ギリシアの哲学者たちは頭脳を明晰にするため菜食を実践し、その生活スタイルをマクロビウスといったそうですし、身土不二とは本来仏教用語です。桜沢如一は陰陽に基づく東洋思想や日本に古くからある食養生、、現代科学を結びつけて明快な理論を打ち立てました。それがマクロビオティックです。その一つとして食養生があるのですが、それはマクロビオティックの一つの応用に過ぎません。マクロビオティックを学ぶことは、いかに食べるべきかにとどまらずいかに生きるべきかについての羅針盤を手に入れることだと思います。マクロビオティックの原理はそんなに沢山はありません。けれどこの原理原則にてらして物事を見直すと、これまで混沌としていたことがにわかに道理をともなって良く理解ができるようになります。桜沢如一はこれを魔法のめがねと呼びました。次回は魔法のめがね、マクロビオティクの五原則をお話ししましょう。
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