☆産経新聞群馬版毎週金曜日掲載で『群馬女性5人のリレーエッセー』が2005年1月からスタートしています。
5週に1回づつ寄稿している浦部農園マダム・オリザの文章を産経新聞の承諾を得て転載します。
No.22 2007.9.6 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
この夏の暑さの記憶を体が忘れるまもなく急に気温が低くなりました。毎年の事ながらこの時期の気温の変化には振り回されてしまいます。おまけに晴れ間がいくらも続かぬうちにまた雨、と、お天気をにらみながらの稲刈り予定はおもいどおりには進みません。おまけに家の中では連日新米の注文でFAXと電話がすさまじい。何年か前までは、電話が鳴りやむ夜10時過ぎから夜中の1時2時までパソコンにむかい、翌日は稲刈り予定の圃場の防鳥ネットをはずしに行くなどできたのに、このごろはすっかり夜が苦手になりました。夜のうちにすませてしまえば楽な仕事も、どうにも眠気に勝てない。若いときは徹夜も平気だったのにと愚痴もでます。でも、考えてみればそんな無理がかさなって難病を引き起こした過去があるのですから、ここは少し利口になって生活をコントロールしなければなりません。日頃お客様には夜12時前には寝ることですなどと説教がましいことをいいながら、さて自分はというと眠気さえなければ徹夜してでも仕事をしたいが本音。頑張りたい自分、頑張れるつもりの自分はかわらないのに、体は眠気に打ち勝てない。でもそれは、少しずつ老いの坂を下り始めた体の自己防衛でもあるのでしょう。田植えから炎天下の草取り、ネット張りと続いた一夏の疲労が蓄積していても不思議はないのに、毎朝すっきりと目覚めることができるのは、眠気に負けてしまうがんばりのなさのおかげかもしれません。発病した頃は、疲れ果てていても眠れなくて、朝になると鉛のように重い体をベッドから引き離すような毎日でした。けれど体を使うことが多い今は疲れれば眠くなり、眠れば体が軽くなります。汗水流して働けば健康がついてくるのかと、そのシンプルさに感動してしまいます。でも今の時代、複雑になった労働に汗のにおいは無くなりました。必死に働いているのに汗もかかない労働では、いくら疲れても眠気はやってこない。身も心も疲れ果てているのに体に休めの司令が来ないのです。心当たりのある方はジムにお出掛けになった方が良いかもしれません。それが無理ならせめて毎日ラジオ体操などなさったらいかがでしょう。子供の時はなんてこともなかったなじみの体操も、今なさると体の節々に効いてくるのがわかります。体の養生は食事だけでは片手落ち、体をしっかり動かすことも、効果の高い大切な養生法です。
No.23 2007.11.2 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
10月27.28日は代々木公園のアースガーデンというイベントに出展。毎年春・夏・秋に開かれ、年々規模が大きくなっているのでお出掛けになった方もいらっしゃるかもしれません。地球以外に私たちの生存できる場所はありません。それなのに環境破壊は進むばかりで、回復不可能な状態にまで至るのではないかという危機感が世界の人々の共通の認識になりつつあります。地球を傷つける戦争や環境破壊、その根底にある地球規模での格差に目を向けつつ、その中で何ができるのかを自由な発想で考え、表現し、行動することをうながすのが4月22日のアースディです。代々木公園では世界中で連帯して様々なイベントが繰り広げられる4月のほか、夏と秋にもアースガーデンが開かれます。浦部農園も、環境に負荷を与えない農法としてすべての圃場で有機農業に取り組んでいますから、忙しい時期ですが毎年頑張って出展しています。今年も稲刈りのさなか、新米を積み込んで出かけましたが初日は台風で大荒れの悪天候、それでも翌日曜は快晴のイベント日和で、日頃なかなか顔を合わせることがない消費者と交流できました。人手不足を心配して東京の消費者が毎年駆けつけてくださいますが、今年も悪天候にかかわらず両日ともお手伝いいただき、おかげで私もイベントを楽しむことができました。いつもステキに思うのはここに集う若い人たちのマナーの良さ。色とりどりの国籍不明の衣装が行き交いますが、見れば麻や綿などの自然素材をまとい、買い物袋を持参しています。古着屋もたくさん店を出し、使えるものは最後まで使おうと呼びかけています。そして農園のブースでは玄米食をしている若い人がびっくりするほどたくさん訪れます。販売するよりおしゃべりする時間の方が長いのですが若い人たちにエールを送られ、自分の仕事に誇りが持てる瞬間です。有利販売できるから有機を選ぶのではなく、環境のためにできることとして有機栽培をする、その姿勢が結果として農園の経営を支えるのだと再確認。私が地球のためにできること、それが土に向かう黙々たる仕事だと改めて実感した一日でした。
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