☆産経新聞群馬版毎週金曜日掲載で『群馬女性5人のリレーエッセー』が2005年1月からスタートしています。
5週に1回づつ寄稿している浦部農園マダム・オリザの文章を産経新聞の承諾を得て転載します。
No.28 2008.5.16 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
5月も中旬をこえると農園では第1次の田植えが始まります。なにしろ総面積15ヘクタール、田んぼの枚数は83枚という規模ですから、田植えは3回、したがって、播種育苗も3回に分けておこなういます。各品種を3回に振り分けて発芽させていくのですが、、古代黒米だけは3回とも発芽させます。その訳は古代黒米がこの夏の天候を占う特別な力をもっていると感じているからです。ふつうどの米も、品種ごとに多少の違いはあってもそれなりの規則性を持って発芽します。ところが古代黒米だけはどういうわけか、年により、時期によって、発芽に差が出る、それもはっきりとわかるほどの違いが出るのです。他の品種と比べても例年より異常に遅ければ冷夏、早ければ猛暑です。まるでリスク回避するために稲が戦略をめぐらすかのようです。この米と付き合って18年、日本中が大騒ぎをした大冷害も、昨年の猛暑も、この米が教えてくれました。おかげで気象庁の長期予報が出るより早く、4月には黒米のお告げにしたがって畦畔の整備など夏の備えにはいることができます。この情報を正確に知りたくて、農園では種籾を浸潤させるのに催芽機などをつかわず、井戸水を使い、自然の水温で時間をかけて催芽を促します。品種改良された稲はおとなしく人の管理にしたがいますが、天変地変にもあらがうすべをもちません。ところが古代黒米ときたら、自分の身は自分で守るとばかりに、水温の、あるいはそれ以外の、人には感知できぬ微妙な何かを感じ取って、自分の戦略どおりに進むかのようです。成長過程でも不思議な経過をたどります。1〜2本植の同じ株ながら、出穂もバラバラ、登熟期もバラバラ、そのため、出穂期に低温にさらされたり雹が降ったりして周囲の稲が壊滅的な打撃を被ったとしても、この米だけはいつもと変わらぬ稔りを迎えるのです。いのちの不思議さ、力強さをおしえてくれる不思議な稲です。さて今年の予報ですが・・第1回目は遅く、2回目は早い、3回目はこれからですがどうなりますか・・遅いか、早いかだったこれまでに比べると、ちょっと変。ひょっとしたら今年の夏は冷夏ではじまり途中から一転猛暑になるのでしょうか。黒米大明神のお告げ、読み解く事ができますかどうか、ドキドキしながら迎える田植えです。
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