☆産経新聞群馬版毎週金曜日掲載で『群馬女性5人のリレーエッセー』が2005年1月からスタートしています。
5週に1回づつ寄稿している浦部農園マダム・オリザの文章を産経新聞の承諾を得て転載します。
No.30 2008.7.18 産経新聞群馬版掲載『群馬女性5人のリレーエッセー』より
5月中旬から7月はじめまで、田植え、麦刈り、田植え、麦刈りとお天気をにらみながらのあわただしい作業が続きました。今年は雨つづきで肌寒い日が多く青空をろくに見なかったような気がします。雨が降れば麦刈りはできない、麦刈りを終えねば田植えはできない二毛作ですから、農園では収穫時期が小麦よりやや早い大麦を作つけています。収穫した大麦は日本で唯一有機加工ラインを有する静岡の永倉精麦で押し麦に加工され、そのほぼ全量が再び農園に戻ります。浦部農園の有機大麦の生産量は全体の約8割のシェアを占めており、国産有機押し麦と表示できるものは浦部農園産以外にはほとんど有りません。国産有機押し麦のシェア8割を占めるとはいったいどれほど大規模可と思われるむきもあるやもしれませんが、わずか数人で切り盛りする米農家の裏作にすぎません。むしろいかに大麦を作る農家が稀少であるかを表す数字です。大麦は押し麦だけでなく、麦茶にもつかわれますし、、味噌を作る際の麦麹にもなくてはならない穀物です。しかし、取引価格があまりに低いため国内では生産農家が育ちません。消費者が支払う価格の3割しか生産農家の手元には届かない既存の市場メカニズムの中では、消費者がいかに国産、有機への指向を強め評価しても、生産者が応えられない。でもせめて6割が生産者の手元に残るならどうでしょうか。不足する再生産費を複雑できわめて政治的な助成金の仕組みで抱え込むのではなく、不要なマージンを排する形で生産者の取り分を保証することはできないでしょうか。私は、フェア・トレードという考え、運動の中にその答えがあるような気がしています。公告宣伝もおこなわず、小売店にもほとんでおいていない農園の商品が、ひたすら無償の口コミで全国に広がっていったこの20年の事実を思うとき、いのちを養う農産物に限ってはそんな夢のようなネットワークが実現するかもしれないと思うのです。
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